ドラマ視聴メモ(仮)

主に過去のドラマを、一気に見てあらすじ・まとめ・レビューをしています。

【黄昏流星群】第9話:まるっと文字起こし

前回

www.mmiimmoo.net

 

黄昏流星群〜人生折り返し、恋をした〜 【第9話】

黄昏流星群

黄昏流星群 - フジテレビ

(バー)
若葉銀行・専務:守口「俺のクチから先に伝えておきたい。銀行に戻ってこないか。」
返事をしない瀧沢完治(佐々木蔵之介)に「銀行に戻ってこないか。」と再度言う。
 
完治「どういうことなんでしょうか。」
守口「うちの銀行は今、大きな問題を抱えている。これから、どんどん膿が出てくる。その膿を出し切って、手当をする人間が必要なんだ。おまえの力がいる。」
 
(車内)
瀧沢真璃子(中山美穂)と日野春輝(藤井流星)がキスをしている。
 
(瀧沢家)
暗い玄関に完治が帰ってくる。「ただいま」返事はない。
 「いないんだ」時計は23時を指している。間もなく玄関の開く音。
 
真璃子「ただいま。っていうか、おかえりなさい。」
完治 「どこ行ってたんだ?こんな時間まで。」
真璃子「のど乾いた。あ、あなたもお茶飲む?」
完治 「どこいたんだ?」
真璃子「あなたは?」
完治 「山だよ。」
真璃子「そうか。そうだった。」
完治 「帰りに居酒屋寄ってきてね、今帰ってきたとこ。」
 
真璃子「私は病院に行ってたの。」
完治 「病院?」
真璃子「春輝さんのお母さんが倒れて。春輝さんの忘れものを届けに行ったら、お母さんが出てらして、目の前で倒れたの。」
完治 「え?」
真璃子「ガンの再発で、脳貧血起こしたんだって。ずっと体調が悪かったみたいなの。お気を落とされたのは元はと言えば、私たちのせいだし、放っておけないでしょ。」
完治 「そうだな。じゃ、春輝君もこれから、大変だな。」
真璃子「お風呂、先入っていい?」
完治 「ああ。」
 
(瀧沢家・洗面所)
真璃子は先ほどの春輝を思い出す。
 
(車内)
シートを倒したあと、首筋にキスを続ける春輝に、「やめて。…やめましょう。」と制止する真璃子。
 
春輝 「ダンナさんのこと、まだ好きですか。」
真璃子「わからない。…わからないけど、私は今、弱ってる。弱ってるもの同士がこんな風に抱き合っちゃダメだと思う。」
 
車を降り、助手席のドアを開け、手を差し出す春輝。
真璃子は手を取り、車から降りる。
 
春輝は気持ちを切り替えたように、「わかりました。じゃあ、いつか晴れた日に。真璃子さんの心がいつか晴れたら。こんな暗い夜じゃなくて、雲一つない、ピカピカの日に。抱き合いましょう。」
 
(荻野倉庫・事務所)
川本保(中川家礼二)「今年の忘年会な、社長が、想い出ボックスの好調を受けて、奮発してもええって言っとった。」
木内祐輔(笠松将)「わー、瀧沢さん神様ッス。俺、一度でいいんで、キャビアを食ってみたいッス。」
奥山敦子(三浦真椰)「バカ。瀧沢さんのおかげなんだから、瀧沢さんの行きたい店にいきましょう。」
完治「ああ、ああ、私はどこでもいいですよ。」
 
課内は明るく会話が続く。
木内「じゃ、俺キャビア食ってみたいッス。」
奥山「じゃ、次カラオケ!」
女性社員「えーまたですか。奥山さーん」
 
完治のスマホが鳴る。表示は《頭取室》。川本は心配そうに完治を見つめる。
 
完治「はい。瀧沢です。」
 
(若葉銀行・頭取室)
若葉銀行・頭取:秦「電話ですまない。だが、急ぎの件でね。守口くんからも聞いてるね?」
完治「はい。」
頭取「単刀直入に言おう。経営企画室長のポストを用意した。君に、経営の全般を仕切って欲しい。」
 
(荻野倉庫・事務所)
完治「ありがとうございます。あの…少し考えさせていただけませんか。」
頭取「いや、考えるまでもないだろう。こんなことは異例中の異例だ。まあ、出向先が君を離したがらないのかもしれんが、こちらから話しを通しておこうか?」
完治「あ、いいえ、それは。あの、少しお時間をください。よく考えた上で、結論を出しますので。」
 
川本は心配そうに完治を見つめ続けている。
 
(荻野倉庫・食堂)
小俣房江(山口美也子)「みそバターラーメンのお客さん!」
 
完治「目黒さんは?」
房江「辞めたわよ。辞めますって言ってそれっきり。」
完治「彼女、今、どこにいるかご存知ですか。」
房江「家なんじゃないの? …みそバターラーメンのお客さん!冷めちゃうわよ。伸びちゃうわよ?」
 
完治は茫然とする。
 
(瀧沢家・キッチン)
真璃子は茶碗にごはんを装い、完治は冷蔵庫から缶ビールを出す。
 
完治 「銀行に戻って来ないかって、言われてるんだ。」
真璃子「そう。」
完治 「守口さん、パワハラ疑惑が晴れて、役員に返り咲いた。その引き上げで、俺にもポストが回ってきた。」
真璃子「すごいじゃない。よかった。」
完治 「どうなのかな。今の職場もすごく楽しいし、必要にされてる。手ばなしに喜べないんだ。」
真璃子「よかったわよ。私は、安心した。」
完治 「安心?」
真璃子「これで、思い切って、家を出て行ける。」
完治 「なんだって?」
真璃子「私、家を出て行こうと思うの。」
完治 「どういうことだ。」
真璃子「ほんとは理由、わかってるんじゃないの?あなたには、好きな人がいる。」
完治 「いつから知ってた?」
 
真璃子「わかるものよ、なんとなく。…会社の人よね。名前は、目黒栞さん。…ちょっと前、あなたの残業が続いてた晩に、一度だけ会社に差し入れを持って行ったの。その時、あなたとその人が一緒にいるところを見ちゃったの。あなた、とってもいい顔してた。おだやかで、幸せそうで。足りないものはなんにもない、っていう顔してた。私の知ってるあなたは、いつでも上を向いて、ここにはないものを求めてあがいてる人だったから、あなたでもこんな顔するんだな、って思った。あなたに好きな人がいるって知ってても私、平気で、奥さんやっていられる。あなたからお給料もらって、お掃除して、お洗濯して、ごはん作って。なんてことない。割り切れば平気でできる。でもね、つまらなくなっちゃった。私にも違う生き方考えられないかなって。これから。どうしていくのが一番いいのか、どうしたいのか。あなたもよく考えてみて。」
 
(聡美の自宅)
デスクでパソコンに向かいながら、水原聡美(八木亜希子)が言う。
「私さ、須藤さんと結婚するかもしれないんだ。」
デスク横のキッチンで食事を作りながら、「ほんとに?おめでとう。」と真璃子。
 
聡美 「我ながら、よく思い切ったと思うよ。ひとり暮らし長いし、誰かと一緒に暮らすとなったら、生活のペースも狂うし、いろいろ無理もしなきゃならない。この歳でキツイよ。正直。」
真璃子は無言でうなづく。
聡美 「でも人生あと30年。まだ私若いんだって思ったの。このまま、この暮らしを続けながら、恋愛だけしてるほうが楽チンだよ?でも、無理しなくなったんだよね。」
真璃子「それだけ、須藤さんに魅力があったのね。」
 
聡美 「ていうかね、わたしは一生懸命、仕事してる。向こうも向こうの世界でがんばってる。お互い励まし合う同士みたいなとこがあんの。そういう絆みたいなのが、この先も壊れないな、って自信が持てたから、結婚しようと思ったんだ。例え一時的に、あっちが若い女にフラーっとフラつくことがあったとしても、私たちのお互いを思いあう感じは、きっと消えないだろうなっと思って。」
 
真璃子「いい人に巡り合えたんだ、聡美は。」
聡美 「ごめん真璃子がうまく行ってない時に。」
真璃子「いいよそれは。」
聡美 「でもさ。だから、真璃子にも、簡単にあきらめて欲しくないなって思って。結婚て、好きとか嫌いとかの向こう側にある世界だと思うんだよ。」
真璃子「好きとか嫌いとかの向こう側?」
聡美 「好きになって結婚して、嫌いになっていろいろあって、その向こう側。今度、私、そこまで行ってみたいんだ。」
 
(荻野倉庫・事務所)
川本「瀧沢さん、ちょっとちょっと。クリーニング屋のタグ、ついたままですやん。これ。」と完治の作業着の襟元を見て言う。「しっかりしなはれ、しっかり。」
 
川本が笑いながら席へ戻ると、木内は川本のベストを指さし、「課長、ボタンずれてる。」「え?あ、これファッションや。」
 川本も、課のメンバーもみなが笑っている。
奥山はわざわざ席を立ち、完治のタグを取ってあげている。
 
(瀧沢家)
暗い部屋に帰宅する完治。真璃子はいない。
 
洗濯ものも干されたまま。
カップラーメンを作ろうとすると、ポットにお湯がない。
 
サッシを開け、缶ビールを飲みながら思い出す。
 
真璃子『私、家を出て行こうと思うの。』
 
空を見上げると、満月が見える。
 
栞『こんなきれいな月、瀧沢さんと、次にいつ見れるかわからないし。』
 
スイスで夜空を見た時の栞。
 
完治は月を撮り、メッセージを送る。
 
完治《月がきれいです。そちらからも見えますか》
 
(漁港・会議室)
茅野緑(美保純)「目黒栞さんね、住所は東京大田区…」
目黒栞(黒木瞳)「はい…今まで、母の介護をしながら、荻野倉庫というところの社員食堂で働いていたんですけども、母がなくなりましたので、フルタイムの仕事に切り替えたいと思いまして。」
緑「東京ならいくらでも仕事あるだろうに。どうしてこんなとこに。」
栞「は…、海が好きで!」
緑「……ま、いいけど。仕事、立ちっぱなしでキツイよ。大丈夫?体力あるほう?どうなの。」
栞「はい、お願いします。なんでもやります。」
 
(漁港・外)
自動販売機で飲み物を買う栞。病院で言われたことを思い出す。
 
医者『お母様も確か、糖尿病でしたね。あなたも同じ、糖尿病です。更に、糖尿病網膜症も発症していて、このまま放置すると、失明する危険があります。この病気は治療しない限り、日々進行していく病気です。今すぐ治療を開始して、これ以上悪くならないようにしていきましょう。』
 
失明の可能性があると聞いてショックを受ける栞。
 
財布から、若葉銀行の新宿支店・支店長だったころの、完治の名刺を取り出し眺めるが、すぐしまう。
スマホで、完治からのメッセージを見る。
 
完治《月がきれいです。そちらからも見えますか》
 
完治の残業を手伝い、一緒に満月を見た時の完治の顔。
 
ひとりで歩く栞。
 
(居酒屋)
井上秀樹(平山祐介)「守口専務も、ほんっと声デカかったよな。」
完治「怒られてるかと思ってた。」と上機嫌に笑い話をする二人。
 
井上「ああ、そういえばおまえ、話しあるって言ってなかったか。」
完治「ああ実は、銀行の本部に戻って来ないかって誘ってもらってるんだ。守口さんから…」
井上「…おお、そうか。よかったじゃないか。おめでと。」
完治「ありがと。ま、正直、迷ってる。俺は、今の会社の仕事にやりがいを感じる。それにいろいろ複雑な事情があるらしい。守口さんの口ぶりだとうちの会社、世間に公表できない、贈収賄か不正融資があるみたいだ。」
井上「そうか。」
完治「いや、おまえならなにか知ってるかなと思ってさ。」
井上「いや。わからないなぁ。」
完治「そうか。」
井上「コンプライアンス強化で、チェックが厳しくなってるしな。俺の知る限り、特に問題はない。」
完治「ならいいんだ。」
井上「奥さんは?なんて言ってるんだ?」
完治「実は…女房は家を出て行った。」
 
店主・徳田和夫(小野武彦)が他席の片付けをしながら、完治のことばに驚く。
 
井上「理由はなんだ?」
完治「俺が悪いんだ。」
井上「はあ?女かあ?」
完治「お恥ずかしい。」
井上「え?…へえーー。相手は?どういう人なんだ。」
完治「強い女性だ。清楚で、凛としていて、百合の花みたいな。」
井上「いい歳して、なに、文学少年みたいなこと言ってんだよ。」
完治「でもその人にも逃げられた。」
井上は大笑いし、「最悪だな!」
完治「最悪だ。でももっと最悪なのは、娘が駆け落ちした。しかも、俺より年上の男と。もう笑えないだろ。」と自嘲する。
 
井上「それにしても、おまえ、変わったよな。こう、柔らかくなった。昔は無駄なことは絶対しないって感じだったろ。なんだか、つけ入る隙がないっていうか。イヤなヤツだったよ。」
完治「そんなこと想ってたのか。おまえ。今さら言うなよ。」
井上「冗談だろ。」
完治「でも、この一年いろいろあったなぁ。いろんな人には会ったし。」
井上「人生で一番大事なのは、仕事じゃない。人間だ。俺は最近、つくづくそう思うんだ。どんなに人間に出会うかで、人生は灰色にもバラ色にもなる。いいなあ、おい。俺も一度くらいしてみたかったよ。めくるめくような恋か。えぇ?」
 
徳田「一緒にいいか?」と自分のコップを出す。
完治「ああ、もちろん。」
井上「井上っていいます。」
徳田「ああ。」
完治は振り返って店の入り口を見て「閉めたんですか?また。」と聞く。徳田は酒をつぎ、ヘヘッと笑う。
 
(聡美の自宅)
サッシの窓を掃除する真璃子。
 
聡美は電話している。「そこは大事なセリフなんです!譲れません!え、ちょっと待ってくださいよ。マチルダそういう媚使うキャラじゃないと思うんですけど。ヒダさんの個人的な好みですよね。好き嫌いで言うのは、ひきょうですよ?」
 
ため息をつき、真璃子に聡美は「あ、ごめーん!締切近くて。いろいろありがとね。」
真璃子は「邪魔しないようにするから。」
 
(スーパー)
真璃子「やっぱりギュウかなー。」
 
(バス停)
ひとり暮らし用の間取りを見る真璃子。
 
(聡美の家)
真璃子「ただいま。」
聡美がいないが、リビングにスーツケースが置いてあるのが目に入る。
 
聡美 「あ、おかえり。ごめん、あの人、急に来ちゃって。」
真璃子「須藤さん来てるの?」
聡美 「ん。居間、シャワー浴びてる。」
真璃子「ごめん、なんか、まずいとこ帰って来ちゃった。」
聡美 「いやいや、こっちこそごめんね。」
真璃子「わかったわかった。じゃ、あのこれ二人で食べて。また!じゃぁね。」
聡美 「ごめん、真璃子ー。」
 
須藤「聡美!」
聡美「あ、はーい。」
 
(映画館)
ひとりで映画を見るが、集中できず、途中で退席する真璃子。
 
(外)
ぼーっと佇み、春輝と以前一緒に見た観覧車を眺める。
 
すると、ベンチに春輝を見つける。
 
となりのベンチに腰掛ける真璃子。
 
真璃子「春輝君?」
春輝 「あ。」
真璃子「すごい、偶然ね。」
春輝 「そう、ですね。」
真璃子「仕事は?」
春輝 「休んでます。」
真璃子「お母さんの介護で?」
春輝はうなづきもしない。
真璃子「お母さんのこと、事務所には伝えてあるの?」
春輝 「まだ。事務所に話したら向こうは、便宜を図ってくれるんでしょうけど。迷惑かけたくないし。辞めてもいいかなって。」
真璃子「それはダメよ。介護で仕事辞めるなんて。お母さんはそんなこと、望んでないはずよ。」と春輝に近づき、強めの口調で言う。春輝は、真璃子の顔を見上げるが、返事せずうつむく。
 
真璃子「私に手伝わせて。」
春輝 「え。」
 
(日野家・リビング)
ソファーには毛布、テーブルも資料や飲み物で散らかっている。
キッチンもカップ麺のゴミが散乱し、食器も洗われていない。
春輝もうつろで、荒れた生活がうかがえる。
 
真璃子「お母さんは?」
春輝 「今、眠っています。……起きると僕を呼ぶんですよ。いつ起きるかと思うと、なかなか眠れなくて。」
真璃子「大変ね。」
春輝 「なんとかなりますよ。なんとかしなきゃいけないし。あ、ごめんなさい。片付いてなくって。」
 
資料やタオルを向かいのソファに移動させるが、ため息をつき座り込む春輝。
 
真璃子「私がやる。」
春輝 「いいです。そんな」
真璃子「やらせて。あなたは少し横になって、2時間でも3時間でも眠らなきゃダメ。それで、明日はちゃんと会社に行って。お母さん、私には居てほしくないと思うけど、気が付かれないようにこっそりやるから。これくらいしかできないけど、これくらいはさせて。」
 
洗い物をはじめる真璃子。
 
(居酒屋)
完治「まだ、やってますか?」
徳田「今、映ってるのこの前一緒に来た男じゃないか?」
 
男性アナウンサー「今回の不正融資の中核となるアリオカ不動産はサブリーズというシステムを採用しており、入居者の募集も同社が行い、所有者には…家賃の支払いを保証していました…」
 
店のテレビを見ると、モザイクがかけられているが井上だった。
 
女性アナウンサー「若葉銀行の不正融資に関して、銀行に提出される資料の改ざんや、みせかけの預金を行なって……」
 
完治「井上……」とつぶやくと、スマホを取り出し電話をかけはじめる。
 
(日野家)
ソファで寝入る春輝。寝返りを打つ。
 
真璃子は春輝に毛布をかけ、しばらく見つめる。
 
 
朝。リビングは片付けられ、朝食が作られている。
 
真璃子はガラス戸を掃除している。
 
春輝 「おはようございます。ごめんなさい、ごはんまで作ってもらって…」
真璃子「早く食べて。今日はちゃんと事務所に行ってね。」
春輝 「でも、母が起きたら…」
真璃子「私が説明する。罪滅ぼしだって言えば、納得してくれるでしょ。」
春輝 「母は自分で用は足せます。でも、自力では長く歩けないんです。」
真璃子「わかった。」
春輝は、やっと笑顔を見せ、パンパンと顔を叩き、「よし!顔を洗ってきます。」
 
(日野家・廊下)
掃除をする真璃子。踊り場まで、春輝の母・日野冴(麻生祐未)が降りてくる。
 
真璃子「春輝さんは事務所です。あの、今日は私が用をさせていただきます。ご用があれば、なんでもおっしゃってください。一通りすんだら、帰りますから。」
 
柱時計が、3時を告げている。
 
冴「来て。少し、話しましょう」
 
(日野家・寝室)
冴  「遺影にする写真、選んでたの。」
真璃子「そんなこと、おっしゃらないでください。」
冴  「自分の体のことは、自分が一番よくわかっている。そろそろホスピスに入るつもり。あの子は反対するでしょうけど。これ以上あの子に迷惑をかけたくないの。……春輝の小さい頃の写真もあるわ。見てちょうだい。どうぞ。」
 
冴  「かわいいでしょう。」
真璃子「ええ、本当に。」
冴  「私の宝物よ。あの子のために、料理をして、洗濯をして、あの子のシャツやハンカチ、一枚一枚ていねいにアイロンをかけて…それが私の生きがいだった。悔しいわ。今はなにひとつできやしない。私のために、あの子がダメになるのは見たくない。ですからね、こんなこと、本当は頼みたくないんだけど、わたしにいよいよの時が来るまで、この家のことお願いできるかしら。…あなたの立場なら、それくらいやってもいいんじゃない?そうでしょ?」
 
(荻野倉庫・屋上)
完治は電話をしているが、「おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にいらっしゃるか、電源が入っていないため…」
 
完治「井上……」
 
(荻野倉庫・事務所)
奥山はネットニュースを見ているのか、「若葉銀行、大変なことになってますね。」と声をかける。
完治「ああ、そうですね。」
木内「こういう悪人がのさばるんだよなー。瀧沢さん、こんなとこ辞めてよかったッスよね。」
完治は返答に困る。
木内「これからも、荻野倉庫、お願いします。」
奥山・女性社員らも「お願いします」と続く。
 
川本は複雑そうに見ている。
 
奥山「瀧沢さん、ランチ行きましょ。」
瀧沢「あの、私、パン買ってきたんで。ありがとうございます。」
 
木内「課長、行きますよ。」
川本「うん、あの、腹がアレや。…アレや!」
木内「…はい。」
 
(荻野倉庫・屋上)
また電話をする完治。
 
川本がお昼ご飯と、ラグビーボールを手に近づく。
川本「ここ、いいですか。」
完治「どうぞ。……おにぎりですか。」
川本「ええ。120円が3つで360円。かけることの消費税。小遣い3万円の身としては、3日に一度節約せんとね。」
完治「そうですね、お互いに。」
 
川本「へへ、瀧沢さんはそんなことないでしょ。いや、皮肉やなしにね。いや、瀧沢さんはウチみたいなとこに長くおる人やないと思うてました。銀行から引きが来てるんでしょ。わかりますよー。今ごろ本店に呼び出されて、融資の話しでもあるまいし。他に考えられませんもん。それに、あのニュース見ても…」
 
完治「まだ、戻るとは決めてません。ここに置いていただいて、みなさんと一緒にさせていただいてる仕事は、ほんとに創造的で、楽しいんです。慣れないことばかりですけど、いや、その分、まるで新人に戻ったみたいで、毎日が新鮮なんです。おこがましいことを言うようですが、仕事のおもしろさは、肩書の重さや給与じゃないんだってことがわかったんです。ここだけの話し、若葉銀行は今いろいろ問題を抱えています。必ずしも、戻ったところで楽しい仕事が待っていると、そう思えませんがね。」
 
川本「ここでの仕事が楽しかったんは、気楽やったからとちゃいますか。あんたにしかできん、難しい仕事が銀行で、あんたを待ってるんや。チャレンジせんでどないしますの。こんなちいちゃいところで終わるような男やないでしょう。もう一旗揚げな。ハハ。」
 
完治「川本さん……」
 
川本は完治の胸元にラグビーボールを投げる。
受け取ったラグビーボールを、落とせというジェスチャーをする川本。
わからず、足元に転がす完治。
 
川本「ピッ。ノックオンスクラム帝京ボール」 ※礼二のネタやね
 
(日野家)
春輝が仕事から戻り、二階の母の寝室の様子を気にかける。
一階で、冴の明るく笑う声。
 
真璃子「あ、おかえりなさい。」
冴  「おかえり。」
 
楽しく仲よさそうにする二人を見て、戸惑う春輝。
 
春輝 「ただいま。」
冴  「今ね、あなたの小さい頃の話しをしてたのよ。お気に入りのクマのぬいぐるみのポンちゃん。海水浴にまで抱いて入って、波にさらわれちゃって大泣きしたって話し。」
 
真璃子はジュースを注ぎ、どうぞ、と春輝の席に差し出す。
 
春輝 「忘れちゃったな、そんなことあったっけ。あれ、お母さん、今日はごはん食べたんだ。よかった。」
冴  「この人ね、料理うまいのよ。娘さんはどうだったかわからないけど。」
真璃子「その節は、すみませんでした。」
冴  「いいのよ、もう。春樹のあかちゃんの顔見るまでは、生きてるつもりだったけど、もう諦めたわ。」
春輝 「なに言ってるの、お医者さんだって言ってただろ。お母さんのがんばり次第だって。」
冴  「まあね、医者は気休めを言うから。来月にはホスピスに入るよう、手配したわ。準備をしておいて。」
春輝 「心配しなくても、お母さんのめんどうは僕が家で看るよ。」
冴  「それは絶対にダメ。」
春輝 「どうして。」
冴  「自分のことが自分でできなくなったら、お母さんはホスピスに入ります。あなたに醜い姿を見せたくないの。」
春輝 「醜くなんかないよ、病気になったら、誰だってふつうのことだろ。」
冴  「ふつうじゃダメなの、美しくいたいの。あなたの前では。……わかってくれるわよね。」
 
(荻野倉庫・食堂)
栞の同僚・小俣房江(山口美也子)が働いている。
 
この食堂で再会した日、栞の驚く顔。
 
完治は食堂には入らず、立ち去る。
 
(漁港)
台車の足元が段差に引っかかり、進めない。男性「なにやってんだ、しっかりしろよ。」、栞「あ、すみません!」
 
(若葉銀行・本店)
頭取・秦幸太郎「待ってたよ。早速だが、不正融資の内部調査委員会のトップをやってもらいたいんだ。一度、外の世界を見た君だからこその頼みだ。」
完治「かしこまりました。全身全霊を尽くします。」
堅い握手を交わす。
 
 
完治「このたび、調査委員会の委員長に就任しました、瀧沢でございます。わが行の浄化と改革のために、全力を尽す所存です。まずは一連の問題の業務に関わった、幹部・行員の聞き取りをはじめます。」
 
常務・金田真之「あれは、井上君の独断でやったことじゃないのかな。みんな関与を否定している。」
完治「ですから、そこを調査します。調査しなければわからないことですから。」
表情はおだやかだが、口調はキッパリとしている。
 
(漁港)
栞は重たそうな荷物の上げ下ろしし、ホースで水をまく。
 
緑「ねえ。あんたもそろそろお昼にしたら?」
栞「はい。これ終わったら、休みます。」
 
栞は視界に違和感を感じたように、遠くを見て、大きく息をする。
 
(日野家・リビング)
春輝のYシャツにアイロンをかける真璃子。
袖には「H.H」とイニシャルが刺繍されている。
 
春輝が帰宅するがうしろから腕組みをして、アイロンがけをする真璃子を、静かに見守る。
※めちゃくそかっこよす。
 
春輝が寄りかかったドアのきしむ音がして、振り向く真璃子。
 
真璃子「どうして入ってこないの?」
春輝 「このまま、時間が止まればいいのになーって思って。……母がこれ以上、悪くならず。真璃子さんがここに居て。ずーっとこのままなら、どんなにいいかと思って。」
 
そう言いながら真璃子に近づく。真璃子はYシャツを何枚か差し出し、「これ、できた。持って行って。」
春輝は構わずつづける。
 
春輝 「真璃子さん、前に言ってたよね。弱ってる人同士は、抱き合っちゃいけないんだって。どうですか。まだ、弱ってますか。」
真璃子「そうね…でも、ちょっと元気になったかな。自分がしたことが喜んでもらえる。それだけで人って、ちょっと元気になるのね。あなたは?」
春輝 「僕も元気になりました。」
 
微笑みあう二人。春輝は真璃子の頬に触れキスをする。おでことおでこを合わせ、また微笑み合う。
 
冴がその二人の様子を見ている。
 
(若葉銀行)
完治「カタオカ君、井上部長、聞き取りの時間、過ぎてる。呼んできてくれ。」
カタオカ「はい、呼んできます。」
 
 
足取り重く、外階段を一歩一歩上る井上。
 
 
カタオカ「瀧沢さん!井上部長がっ!」と駆け込んでくる。
 
完治「どうした?」
カタオカ「来てください!」
 
あわてて席を立ち、廊下を走る完治。
 
(漁港)
桟橋を掃除する栞は、手を止め、デッキブラシを手放す。
左目だけをてのひらで押さえると、右目は問題ない。
右目だけをてのひらで押さえると、左半分が黒く、視野が狭まっていることに気づく。
 
(若葉銀行)
外階段から下を見て、指をさすカタオカ。
追って、完治もおそるおそる下を覗く。
 
警備員「だいじょうぶですか。」
行員らも何人か駆け寄っている。
 
井上は頭部にけがを負い、倒れて、周りには血が広がっている。
 
完治は叫び、外階段をあわてて降りていく。
(完)

 

第9話:まとめと、言いたい放題ドラマ評

(まとめ)
  • 蔵之介の古巣・若葉銀行に戻らないかという異例の誘いがあるが、不正融資疑惑が起き暗雲が漂う。対して、荻野倉庫では黒木は去ったが、課のメンバーには認められ馴染んでいて、去りがたい。
  • 中山は、藤井流星に気持ちがなびいているのか、娘・石川恋がいなくなり気が抜けたのか、家を出ることに。でも八木亜希子や、流星のウチに居候。仕事探せ、仕事。
  • 緑役に美保純。漁港にいるアンニュイな女性にピッタリ。漁港女優。ラスト二話だけの登場でもったいないけど、たぶん来週、いい働きをするに決まっています、キャスティング的に。
 
(言いたい放題ドラマ評)
ラストシーン。殺人ならあるけど、自殺をドラマで描くのは、なかなかない。でもまあ未遂だからかな。
黒木は治療しないと進行すると言われているのに、治療しないのはなぜなのか。娘から別れてと言われたこともクリアになったはずなのに、自暴自棄なんでしょうか。
 
中山と麻生の、ドラマ上の年齢差がわからないが、自分の息子が、自分と同世代の女性を連れてきたら……わたくし自身4人の息子がいますので、ね、共感できるとしたら日野の母親だけなんだけども。しかも中山は、元婚約者の母親だからねぇ…やっぱり複雑かも。料理うまくてもヤダわあ。